輸出の増加を狙った量的緩和。物価上昇でお得な人と損する人。

1997年、日本は超高齢化社会に突入するとともに労働力人口減少社会に反転しました。
21世紀になりこれらの人口動態の急速な変化によって内需が激減、アジア新興工業国の低価格輸入品の増加と相俟って日本は「デフレスパイラル」と呼ばれる深刻な状態に陥りました。
政府日銀はこれに対して「ゼロ金利」と呼ばれる低金利政策を維持しましたが顕著な効果が出ません。
さらにリーマン・ショック時に円買いが生じ史上最高の円高状態となり貿易立国である日本の輸出が激減するという異常事態になりました。

一般にデフレとは物価の持続的な低下を意味しますが、日本の場合デフレスパイラルの背景には人口動態を基礎とした内需の激減という理由があるために金利政策が機能しない状態です。
そこで2013年、政府日銀は物価の上昇率の目標を2%とするインフレ・ターゲットを設定し「異次元緩和」とも呼ばれる人類史上類を見ない量的緩和を実施。
この緩和は「黒田バズーカ」と呼ばれるほど強力に円高状態にあった円を数か月で円安方向へ転嫁させました。

この円安誘導の目的は輸出の増大にあったのですが、想定されたほど輸出は伸びませんでした。
一昔前であれば円安は直ちに輸出の増加に結び付いたのですが、現在はそうではありません。
理由はアジア諸国が工業製品の輸出国として台頭してきたため、多少円安になっても競合する輸出国が増え輸出増加の感応度が鈍くなったからです。

この円安で確かに輸出は伸びています。
自動車産業等の輸出関連企業の多い地域ではこの円安は人々にとってお得だったといえます。
しかし円安は同時に輸入製品の物価を高騰させます。
とくに食料品の物価の高騰が顕著でした。
輸出がそれほど伸びずに輸入の物価が大幅に上がったため輸出から輸入を引いた付加価値レベル(GDP)の純輸出は僅かなもので貿易赤字の解消も十分達成できたとは言えません。

一般消費者にとっては食料品を中心とした物価の上昇は実質的な所得の低下です。
このため消費者態度は悪化しました。
物価の高騰による食料品への支出が増えた分、他の製品への需要が減り、トータルな物価の上昇率はインフレ基調へは変化していません。
この急激な円安によって輸出関連の人々は多少はお得な感じがあったかも知れませんが多数の消費者にとっては損をした感じがあるのではないでしょうか。

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